唱歌「ふるさと」コンビがつくった一世紀校歌 「峻嶺(しゅんれい)聳(そび)えて東を亘(わた)り」で始まる長野県下高井農林高校の校歌は 大正15(1926)年、創立20周年の記念事業として「ふるさと」や「朧(おぼろ)月夜」「春の小川」などの文部省唱歌をつくった高野辰之(作詞)・岡野貞一(作曲)コンビによってつくられた。同窓会資料『大正十五年一月 校旗寄付金芳名及會計簿 下高井農林學校』によると、 二人には謝礼金として合計60円が支払われている。この額は当時の大卒サラリーマンの初任給に相当する。 長野県中野市(旧豊田村)出身の高野辰之は、高野辰之記念館のホームページ(https://www.city.nakano.nagano.jp/takanokinenkan/2020082400046/file_contents/sakusiitiran.pdf)によると、県内の高校をはじめ生涯100を超える校歌を作詞したが、そのうち岡野貞一が作曲した校歌は11曲にすぎなかった。2013年、秋田県立鷹巣農林高等学校が閉校となり、 現在も二人がつくった校歌を歌っている学校は、本校と千葉県立千葉女子高等学校の2校となった。千葉女子高等学校のホームぺージ(https://cms1.chiba-c.ed.jp/chibajoshi-h/home-1/schooloutline/)によると、戦後、同校校歌の第3連(第3番)が削除されたため、唱歌「ふるさと」コンビのつくった校歌を現在(2023年)も第3番まで歌っている学校は本校のみである。 下高井農林高校の校歌は創立70周年(1976年)に石碑として建立され、3番の歌詞の一部「花に時あり 実りに序あり」は創立100周年(2006年)記念に石碑として建立された。 あと3年で創立120周年をむかえる本校、唱歌「ふるさと」の作詞家高野辰之と作曲家岡野貞一がつくった長野県下高井農林高校の校歌は、一世紀歌い継がれる文化遺産である。