清陵サイエンスフォーラム21
〜未来をひらく知の誘い〜
生徒の知的探究心を喚起、自然科学の魅力を満喫させ、未来への夢や希望を大きく育むことを目指し、全国各地で活躍するトップクラスの研究者・技術者を招いて講演会やシンポジウム等を開催します。  



 第7回 サイエンスフォーラム21 報告
日 時 2003年5月6日(火) 14時00分〜15時30分
場 所 諏訪市文化センター
対 象 全校生徒,保護者・一般の方の参加約13名
講 師  広中 平祐 先生(財団法人数理科学振興会理事長)
 
テーマ 「生きること 学ぶこと」
概 要

@三つのキーワード
湧源性:自ずと人間の中からわき出てくるもの
差異化:人間の社会には差異が存在する。金子みすずの「私と小鳥と鈴の世界」←「差別」ではなく「差異」を生かすべき=「寛容性」

A京大受験まで
叔父 南本 巌よりの言葉
 ”...diving into a deep ocean、bringing up chast  pearls into the sunlight”(Isac Newton)<暗い海の底に潜って、手探りで探しあった真珠が日光に輝く。>
W・B・イェーツ(詩人)の言葉 ”教育はバケツを満たすことではない、灯をともすことである”
前田文友広大教授よりの言葉 ”数学は世界を映す鏡(mirror)である”

Bハーバード大学院時代(2つの幸運)
ユダヤ人数学者ザリスキー(ハーバード大教授)との出会いをきっかけにハーバード大に留学。著名な先生には優秀な研究仲間が集まる。その仲間達との出会いと、専門の異なる留学中の日本人(小沢征爾氏も)との出会い。専門の異なる人たちとの交流は人生を広げる。

Cパリの研究所からの経験
「小さく生んで大きく育てる」→デュドンネの設立した研究所からフィールズ賞受賞者を6人輩出した。日本的な「組織ありき」ではなく「人ありき」で始めるべき。

Dフィールズ賞について
4年に1度の国際会議で決定。日本では過去に三人の受賞者。20年ごとに受賞している。広中氏は2人目。海外の出版物で先輩受賞者の小平氏と広中氏の写真が逆になっていたという挿話。

E広中氏の数学上の業績の一端
ある現象を写す方法には2通りあり、たとえば写真を撮る方法は方程式による表現であり、筆で書くことはパラメーター表示による表現である。具体的にいえば、「円」はx2+y2=1という方程式による表現と、x=cost、y=sintというパラメーター表示がある。特異点の解消には立体交差の考え方が大切。「ブロウアップ変換」は特異点(ノード・カスプ)の解消を可能にして、関数のパラメーター表現の選択を容易にする。これによれば、パラメーター表示があって方程式表示がない関数について、その隠れた方程式を顕在化することが可能になる。これによって、方程式表示とパラメーター表示は全く対等(等価)となった。

F最後に
「不確実性の時代」(ガルブレイス)、これは冷戦下のことであったが、現在でも存在する=カオス。現在のカオスをどう生き抜くかが大切な課題である。我々人間に未来を見る力はないかもしれないが、未来を創るのは疑う余地なく君たち若者である。”The future is not ours to see、 but it is yours to make!”

 サイエンスフォーラム21 スナップ


最初に古典ギター部による「クラベリトス」の演奏が行われました。


広中先生より「生きること 学ぶこと」とのテーマで講演をいただきました。「湧源性・差異化・寛容性」という3つのキーワードから講演が始まりました。

ご自身の人生の中で、影響を受けた言葉などについて話されました。

先生の数学上の業績の一つである「特異点の解消」について、図を使い、立体交差の考え方について説明をいただきました。

講演後、約40名の生徒が残り、先生に活発に質問をしました。先生はざっくばらんにお答えになり、良い講演会となりました。

(左に同じ)

 


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