創立百周年事業の余剰金によって修復され往事の風格と音色がよみがえりました。 ベヒシュタインピアノ ![]() 元本校校長 宮内邦廣 同窓会の皆様には、常々母校愛に満ちたご支援とご協力を賜っておりますことに心から感謝申し上げます。また、創立百周年記念事業に際しましては、その後の剰余金の使途に関して、学校側からの教育環境整備の要望に温かなご理解をお示 しくださいましたことに厚く御礼申し上げます。お蔭様で、@校内ラン事業の補充、Aトイレの補修、B大体育館ギャラリーの床貼り工事、Cベヒシュタインピアノの修理と調律を実現することができました。中でも、ベヒシュタインピアノについては少なからぬ感慨を込めさせていただきました。このピアノは、昭和三年度の卒業生から七年度の入学生までが卒業時あるいは入学時に一人一円の寄付をし、同窓会から五百円の補助を仰いで、昭和四年に二千五百五十円で購入したものです。当時では家が買えるほどの高価なものでした。それだけに、このピアノには当時の生徒達の「高い文化を希求する」高邁な精神と矜持が込められています。そして、それは以後何年にもわたって、風越生の魂を象徴するものとして、校歌とともに多くの同窓生に愛されてきたものでした。歳月を経て傷みも激しくなり、いつの頃からか音楽室の一角に据えられたままになっていたこのベヒシュタインピアノを修理調律し、飾り物としてではなく授業で使えるようにするならば、往時の同窓生の精神を今に蘇らせ、今後の新しい百年を担う生徒達に長く語り伝えていくことができるであろうし、全ての同窓生の内に秘められている風越魂が営々と引き継がれていく縁(よすが)ともなるに違いないと思うのです。そうすることで、愛着ある校歌二番を失ってしまうことを認めてくださった同窓会の皆様へのせめてもの恩返しになってくれるならばと心から願っている次第です。 |