3学期始業式講話(2020年1月7日)

皆さん、あけましておめでとうございます。すがすがしく2020年を迎えられたことと思います。本日は年頭にあたり、本校が大切にしている「晴耕雨読」という言葉について、わたくしなりに考えたことをお話ししたいと思います。
皆さんご存じのとおり、「晴耕雨読」は、中野市(旧豊田村)出身で「ふるさと」などの作詞家として有名な 高野辰之先生が作詞された本校校歌の一節にあることばです。日本国語大辞典によれば、その意味は「晴れた日には外に出て田畑を耕し、雨の日には家にこもって読書をすること。悠々自適の境遇をいう」とあります。
出典が示されていませんので、気になって少し調べてみました。
「晴耕雨読」が意味する内容につながる表現は、例えば東晋から宋の時代にかけて活躍した、「帰去来辞」や「桃花源記」で知られる陶潜の「山海経(せんがいきょう)を読む」という古詩に、「既に耕して亦已に植え、時に還た我が書を読む」。すなわち「畑を耕したり、植えたり、時には我が愛蔵の書『山海経』を読む」とあったり、「微雨東より来たり、好風之と倶なう。汎(あまね)く周王の伝を覧て、流(あまね)く山海の図を観る」。すなわち「折しも東の方から小雨が降ってきて、気持ちの良い風もそよいで来る。周王の物語を拾い読みしたり、山海の草木や鳥獣の図をあちこちながめたりする」とあるのですが、「晴耕雨読」という熟語そのものは、古い時代の和漢の書物には見つけられておらず、近代以降の日本において、その用例が見られるようです。
このように「晴耕雨読」は、ゆったりと、自分の心のままに過ごす、自由な心の在り様を表すことばとして用いられるのが一般的ですが、高野辰之先生は「撓(たゆ)まず倦まず晴耕雨読」とお書きになりました。「撓まず倦まず」とは「くじけずいやにならず」ということでしょうか。高野先生が「撓まず倦まず晴耕雨読」とお書きになったことで、本校の校歌における「晴耕雨読」ということばの意味に広がりが生じたと感じています。
本校同窓会の風間会長様は、同窓会ウェブサイトのご挨拶の中で、校歌の「晴耕雨読」ということばには「やるべきことに懸命に打ち込む」という本校の精神が凝縮されているとおっしゃっています。またこの言葉には、「悠々自適の生活」という意味もあり、本校には、ある程度のことは生徒に任せるといった自由な校風が伝統的に根付いているとも指摘していらっしゃいます。同窓会のウェブサイトについては、ご存じの皆さんも多いことと思いますが、この機会に、ぜひ一度読み返していただきたいと思います。
長野吉田高校の諸先輩が大切にしてこられた「晴耕雨読」ということばには、原義的な意味も含めて、「どのような状況にあっても、ゆったりとした心構えで、主体的に、今自らが為すべきことを判断し、そのことに集中して取り組む姿勢」が教示されているのだと考えました。
泰然とした心の在り様の中で、その時々に為すべきことを主体的に判断し、真心をもってそれに打ち込むことは、混迷の時代といわれる今、まさに求められている力なのではないかと思います。
2019年は台風が列島に猛威をふるい、10月12日に上陸した19号は本県にも大きな爪痕を残しました。気候変動や国際情勢の不安定さ、少子高齢化社会など、わたくしたちが直面する課題は多岐にわたります。
「混迷の時代」、「予測不可能な時代」といった、わたくしたちの不安を煽るかのような見出しを目にすることが多いこの頃ではありますが、いつの世にあっても、世の中の、ほとんど全ての事柄は、未来に関して白紙の状態であるということも、また真理であると思います。
皆さん自身の未来に自らが答えを書き込むために、どうか、主体的に今為すべきことを判断し、真心をもって、それに取り組んでください。
すべての皆さんにとって、2020年がすばらしい年になることを祈り、年頭の挨拶とします。

2学期終業式講話(2019年12月25日)

皆さん、こんにちは。
12月18日に、医療系の探究学習に取り組んだ2年生の学習発表会を参観しました。前段は信州大学医学部保健学科の五十嵐先生による「QOLと医療従事者の役割」と題したご講演。後段は13のグループによる学習発表会でした。医療従事者の不足や医療の地域格差。AIや医療過誤、医療チームにおけるコミュニケーションの重要性。延命治療や余命宣告、臓器移植についてなど、いずれも興味深い課題に関わる発表でした。
各グループの発表について五十嵐先生からコメントもいただき、充実した3時間を過ごすことができました。今年度の探究学習をふりかえるアンケートの中の「まとめや発表をしたことは有意義でしたか」という質問について、5段階の評価のうち上位の二つである「有意義」「ほぼ有意義」と回答した人が共に43.6%いて、ほぼ9割の皆さんが意義を感じることができた学習会でした。
今、学校では「学力の3要素」をバランスよく育成することが求められています。「学力の3要素」とは「知識・技能の確実な習得」「習得した知識・技能を基にした思考力、判断力、表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を指します。探究学習は、この「学力の3要素」をバランスよく育むのに適した学習方法です。
先ほど話題にしたアンケートの自由記述の中に「自分の意見を発信し、それにとどまらず相手の意見を聞き、より良い答えを導くことを、できるかぎり大切にしていきたい」と書かれていたのを読み、大変うれしく思いました。
吉田高校の皆さんには、様々な学びの場を通して、「自ら考え、プレゼンテーションする力」を意識して身につけるよう努めてほしいと思っています。
次に、五十嵐先生からは医療従事者の立場として「QOL」、すなわち「Quality of Life」、「人生や生活の質」を高めるためのお話をしていただきました。私が印象深かったのは、QOLは「様々な内的・外的要因の影響を受けて変化する、可変的なもの」であるということ。「QOLを考える切り口は無限であり、自身のQOLの考えを他人に押しつけることはできない」という指摘でした。
一般的な成人であれば、自分の「人生や生活の質」を考える指標は、経済や健康、人間関係などが代表的なものかもしれません。高校生であれば、それ以外に学習や班活動、生徒会活動なども考えられるでしょう。
はじめ五十嵐先生に「皆さんは自分自身のQOLを高いと感じていますか」と問われた時には「私自身どうなのだろう」と思いましたが、先生のお話しを伺う中で、QOLを考える切り口は無限であり、可変的なものであるならば、小さなことであっても自分が幸せを感じることができる、自分なりの指標を、できるだけ多く持つようにしたらよいなと、都合の良いことを考えました。
探究学習発表会を参観できたおかげで、その日の私のQOLが高まったことは言うまでもありません。
高校生の皆さんにとっては、自分の生活の質を考える際に、学習や班活動、生徒会活動などが大きな要素として思い浮かぶかもしれませんが、皆さんの人生や生活の質を考える切り口は無限であるということを心に留めてほしいと思います。
今日は、探究学習の発表会を参観したことに係って、皆さんには「自ら考え、プレゼンテーションする力」を身につけてほしいこと。自分の人生や生活の質を肯定的にとらえる指標を自分なりに備えてほしいことの二点についてお話ししました。
それでは明日から年末年始休業に入ります。皆さん、健やかに良い年をお迎えください。

2学期始業式講話(2019年9月2日)

みなさん、おはようございます。
日中はまだ暑さが続いていますが、朝夕には涼しさが感じられるようになりました。今年の本校の夏休みは7月31日から9月1日まででした。夏休み明けの始業としては、県内公立高校の中でおそらく一番遅いのではないかと思います。他校の授業が始まっていたこの一週間は少し幸せな気分ではありませんでしたか。
夏休みは、学習合宿や補習授業、模擬試験やオープンキャンパスへの参加をはじめ、新人戦に向けた日々の班活動への取り組みなど、忙しさの中にも充実した日々を過ごし、それぞれに成長を遂げてくれたことと思います。陸上班のインターハイ出場や放送班の全国大会出場。文芸班・書道班・競技かるた班の佐賀総文祭への参加といった活躍もありました。
さて、1学期の終業式に、高校時代を長野県で過ごした広島東洋カープの菊池涼介選手が、高校時代の野球部の監督さんから教えられた「全ての事は心から始まる」という言葉を大切にしているという話をしました。覚えているでしょうか。
以前、前任校の図書館で「嵐にマナブ ポジティブになれる100のヒント」という本を見つけて読んでみたことがあります。2020年を区切りに「嵐」としての活動は休止するそうですが、トップアイドルとして輝き続けるメンバー5人の、単なるアイドルの言葉ではない、人生を前向きに生きる彼らの思いが込められた言葉の数々が紹介されていました。その中で私の印象に残った桜井翔さんの言葉を二つ紹介します。
「高い理想、遠くの目標、強い気持ちがあれば、自分の志は絶対に達成できる。遠回りしたり時間がかかったりしても、それさえが自分の実になる」
もう一つ。「悔しいこと、納得できないことは今でもあるよ。でも、絶対に不貞腐れない。どんな態度や行動を取るかで、僕の真価が問われるから」
菊池選手が大切にしている「全てのことは心から始まる」という教えと共通していると感じました。
今日から2学期が始まります。3年生は具体的な進路の実現に向けて、2年生は吉田高校の牽引役として、1年生は吉田校生としての更なる自己の向上に向けて、それぞれ充実した楽しい学校生活を送ってくれることを期待しています。
2学期も、失敗を恐れずに、やってみたいことにチャレンジしていきましょう。

1学期終業式講話(2019年7月30日)

皆さん、こんにちは。
1学期の始業式で、「周囲と良好な人間関係を築くきっかけとなるあいさつを、自分から先に明るくしましょう」ということ。「学習する身近な環境を整える清掃をしっかりしましょう」ということ。「人間の尊厳を支える円満で善良な人格の完成を目指しましょう」ということの3点についてお話ししました。
5月25日に実施した第1回公開授業のアンケートでは「先生、生徒の皆さんの挨拶が素晴らしいと思いました」と書いてくださった方がいらっしゃって、私もとてもうれしくなりました。
一方で、6月10日に実施した第2回公開授業のアンケートの中には「生徒からの挨拶がなかった。来客にはきちんと挨拶をした方が校風が良くなると思う」というご意見もありました。やはり来校される方は生徒や職員の挨拶を見ていらっしゃるのですね。
私自身は吉田高校の生徒はよくあいさつをしてくれると感じていますが、引き続き、学校の内外で、自分から先に明るくあいさつすることを心がけていきましょう。
7月5日に「生きていく上で大切なこと」と題してお話しいただいた比田井和孝先生の講演会は、全校生徒の71.4%が「大変よかった」とアンケートに回答してくれました。
先生のお話の中には数々の印象に残る言葉がありましたが、「今の自分を作ってきたのは親でも環境でもなく自分自身であり、作られたものは変えることができる」という言葉が印象に残ったという感想が多く見受けられました。
ところで、広島東洋カープの菊池涼介選手は、高校時代を長野県で過ごした、日本を代表するプロ野球の名内野手ですが、菊池選手はサイン色紙に、恩師である高校時代の野球部の監督さんから教えられた「全ての事は心から始まる」という言葉を書き添えていると聞きました。スポーツをしている人なら耳にしたことのあるフレーズかもしれません。
私たちの行動、立ち居振る舞いを決めるのは、自分の心の在り様です。心で思うこと、考えることが行動につながり、その人の人生を創るのですから、消極的にものごとを考えない。物を恐れたり悲観しない。言葉が意識に働きかける力は強いので、常に自分も周囲も明るくなる言葉を発して心を積極的にする。
比田井先生は「人生は思ったようになっていく」ともおっしゃっていました。
「全ての事は心から始まる」。1学期の終業式にあたり、この言葉を皆さんに紹介します。
関東甲信地方もきのう梅雨明けしたようで、いよいよ本格的な夏です。熱中症などに注意して、事故・怪我のない、充実した夏休みにしてください。
そして、9月2日には、また全員の元気な顔を見せてください。
終わります。

入学式式辞(2019年4月3日)

昨日来、名残の雪が舞いましたが、肌寒さの中にも木々の芽吹きや柔らかな陽の光に春の訪れを感じる季節となりました。この、すべてのいのちが輝く春の佳き日に、平素より本校の教育振興に格段のご高配を賜わっておりますご来賓の皆様ならびに保護者の皆様のご臨席を賜り、平成三十一年度長野県長野吉田高等学校の入学式を挙行できますことは、誠にありがたく心より御礼を申し上げます。
ただいま入学を許可いたしました新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。本校すべての在校生、職員を代表してお祝いを申し上げるとともに、心より皆さんを歓迎いたします。保護者の皆様、本日はお子様のご入学、誠におめでとうございます。皆様が大切に育んでこられましたお子様が長野吉田高校での多様な学びを通して、自らの人生を切り拓いてゆく力を一層伸長させることができますよう、本校職員一丸となってお子様を支え指導してまいります。ご家庭におかれましても、何卒、本校の教育活動にご理解とご支援を賜り、お子様の自立と成長のため、お力添えを賜りますようお願い申し上げます。
さて、入学生の皆さん。長野吉田高校には教育課程やシラバスに明示された授業を中心とした学びと、学校行事や生徒会活動、班活動などにおける潜在的な学び、活動や人とのつながりから得る多様な学びが用意されています。高校では、こうした多様な学びに皆さんが主体的に取り組んでいくことが何よりも大切になります。
私は、かつて勤務した高校で、当時東洋大学の名誉教授でいらっしゃった英文学者の奥井潔先生が「labor」と「work」の違いについてお話しになった講演をお聞きしたことがありました。「labor」とはいやいややっている仕事、おもしろみを感じていない仕事のことを言い、「work」とは喜びと生きがいを感じ好きでやっている仕事のことを言う。生徒の皆さんは「worker」にならなくてはいけないというお話でした。言うまでもなく「labor」と「work」は職種の違いを指すのではなく、精神の在り方の違いを示しているのです。
皆さんが長野吉田高校での学びに主体的に取り組み、呼吸によって新鮮な酸素を体内に取り込むように、学びを通して新たな自分を形作る材料を存分に取り込み、状況の変化にも柔軟に変容できる、しなやかな自己を形成してくれることを期待しています。
次に、混迷の世の中といわれる現代にあって、正解のない様々な課題に協働的に向き合っていくには、主体的であることと同時に「他者とつながる力」をしっかりと身に付けることが重要であると考えます。デジタル機器を介して、スピーディーで広いネットワークを構築できることも大切でしょうが、多様な人間関係の中で仲間のことを思い、直接的なコミュニケーションを通して周囲との良好な人間関係を構築する力を身に付けることが不可欠です。
皆さんには、長野吉田高校における多様な学びを通して主体性や協働性を培い、他者とつながり、新たな社会を創造する一員として存分に活躍できる力を備えてほしいと願っています。
ところで、高校に入学したことにより、今までとは環境が大きく変わる中、日々の生活を充実したものとするには、心身の健康が欠かせません。そのためには規則正しい生活を送ることです。朝は自分で起き、朝食をしっかりとる。余裕をもって登校し、授業に集中する。先ずは、そうした基本的な生活のリズムを大切にしてください。
結びに、本日ご列席の皆様に重ねて感謝の意を表し、入学生の皆さんの本校での生活が充実したものになることを心より期待して、式辞といたします。

平成三十一年四月三日
長野県長野吉田高等学校長  山﨑 宏

1学期始業式(2019年4月3日)

1学期の始業にあたり、3点お話ししたいと思います。
少子高齢化やグローバル化、高度情報化が急速に進展する現代にあって、正解のない様々な課題に協働的に向き合っていくには、「他者とつながる力」をしっかり身に付けることが大切であると考えます。その際、デジタル機器を介して、スピーディーで広いネットワークを構築できることも大切でしょうが、先ずは多様な人間関係の中で、直接的なコミュニケーションを通して周囲との良好な人間関係を構築する力を身に付けることが不可欠であると考えます。周囲の人と良好な関係を築いていくきっかけとなるのが「あいさつ」です。学校の内外で、自分から先に明るくあいさつをする。長野吉田高校の生徒の皆さんはよくあいさつをしてくれると思いますが、ぜひ学校の内外で自分から先に明るくあいさつすることを今以上に大切にして実践してほしいと思います。
次に、本校には恵まれた施設・設備がありますが、勉強に向かう気持ちが整うためには学習する身近な環境を整えることも大切です。ぜひ、引き続き、清掃をしっかり行うことをお願いします。
最後に、価値観の多様化ということが言われて久しいですが、わたくしは、多様な価値の中にも序列があると考えています。健康で衣食住が満ち足りていれば人間として幸せなのでしょうか。人間の尊厳性、尊さを支えるものは、やはり、善良な人格、良い人格であると考えます。円満で善良な人格が、人間の尊さを支える大切な価値なのではないでしょうか。自身の人格の完成を目指して生きることを考えるうえで、参考にしてほしい本を1冊紹介します。吉野源三郎さんの「君たちはどう生きるか」です。原作は日中戦争の発端となった盧溝橋事件が起きた1937(昭和12)年に発行されました。これまでも知る人ぞ知る名著として読み継がれてきた本ではありますが、マガジンハウス社が漫画化したことがきっかけとなり、80年後の現在、幅広い世代に支持されて200万部を超える売れ行きとなったことは皆さんも知っていると思います。本校の図書館の蔵書にもなっています。すでに読んだ人もいると思います。自分の生き方を考える契機となる本はたくさんあると思いますが、読みやすい本ですので、ぜひ手にとってみてください。