記録的に早い桜前線が北上する中で、この小丸ヶ丘にも一気に希望の季節がやってまいりました。今年は本校の敷地内でもすでに桜がほころび始めています。
そうした中、本校第12回入学式を挙行するにあたり、ご来賓の皆様にはご多用中にもかかわらずご臨席を賜り、まことにありがとうございました。厚くお礼申し上げます。また、保護者の皆様におかれましては、お子様の本校へのご入学に心よりお慶び申し上げます。高校受検という人生最初の大きな試練を乗り越えたわが子の後ろ姿に、感慨もひとしおのことと拝察いたします。 さて、152名の新入生の皆さん、あらためてご入学おめでとうございます。まずは今日の日の感動を、高校生活の原点として、在学中はもとより永く持ち続けてほしいと願います。そして全日制と定時制、学科の違い、また、前期・後期等どの選抜試験で合格したのかは全く関係なく、今日からは同じ校舎で学ぶ仲間の一員であるという意識を持ってください。 入学式にあたりあと2つお話しします。 一つ目は、本校の一員となった今こそ、気を引き締めてほしいということです。皆さんの中に高校に入学できたことに満足し、または安心し、新しく買ってもらったスマホに夢中になったり、高校生になって得られた自由をはき違えそうな人はいないでしょうか?むしろ同じスタートラインに立ったここからが勝負だという意識を強く持ってください。 二つ目はなぜ学ぶのかについてです。 「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと云へり。」 今から142年前に完成した『学問のすすめ』に福沢諭吉が残したこの言葉には実は続きがあります。後段には、人は生まれながらにして貴賤や上下の別はないが、現実には人の世は平等ではないと断言し、その差が学ぶか学ばないかによって生じると説きます。そして学問が重要である理由として、この当時の日本を取り巻く国際環境、すなわち欧米列強の植民地にされていたアジアの地域や、アヘン戦争を経て次第に侵食されつつある清国の状況から、日本が異国に支配されないためには国民が広く学問を修め、国力をつけるしかないと続けます。 この話は昨年8月の学校説明会でもお話しましたが、諭吉の生きた時代とは全く状況が異なる現代において、学ぶ必要性をどのようにとらえればよいでしょうか。 それは、福澤の時代と「危機的」という点で類似しているからです。「グローバル化」の進行、AI・ロボットの進化とともに、IoTの普及さえ時間の問題とされている現在、国内では「人類がまだ経験したことのない」と形容される超高齢化社会の到来が7年後に迫っています。また、経済面での日本の国際競争力は低下傾向にあり、世界経済フォーラムが発表した昨年2017年の国際競争力ランキングでは世界で9位と2年連続で低下しています。今後の人口減少と高齢化の急速な進行は地方を疲弊させ、一部の自治体は消滅が予想されているほどです。 「日本はすごい」「日本は他の国とは違う」「日本は大丈夫」という認識は今や全く根拠のないものであることに早く気づくべきです。 皆さんが高等学校の門を叩いた今はまさにこうした激動の時代の真っ只中であり、そういう状況の中に皆さんは数年後飛び出していくのです。 さまざまな危機感を背景として国は今「明治以来」と言われる教育改革を強力に推進しています。端的に言えば全日制の皆さんが3年生で受験する際の大学入試制度が大きく変わります。現在の「センター試験」は名称を変え、国語や数学では記述式の出題も加わり、グローバル化のカギを握るとされる英語は大学入試センターが出題する問題とは別に、「聞く・読む・話す・書く」の4技能すべてを評価するため、外部の資格・検定試験を活用することになり、調査書も高校時代の活動記録にもとづいた詳細なものに変わります。 こうした状況に対応すべく長野県教育委員会も「高校改革 夢に挑戦する学び実施方針案」を策定し、その中で「探究的な学び」への転換を打ち出しています。 本校もまたこうした変化に対応すべく、さまざまな準備を進め、求められる学力を保証するため授業改善を進めてまいりました。そしてしっかりと地域に根差した教育を目指すべく、地域との連携もさらに拡大する必要を感じています。 言うまでもなく高校生活は勉強が全てではありません。部活動等を通じて、体も心も大きく成長してほしいと願っています。ただ、自分が生きている時代と近未来を的確に把握しているかどうかで高校生活の中身の濃さは大きく異なってくるはずです。後から振り返った時、楽しくもあり苦しくもあり、自らを鍛えたことで人間として大きく成長できたと思える、そんな充実した時間となることを教職員一同心から期待しています。そしてどうか国や地域の未来を託せる人材となってください。 結びに、ご来賓の皆様には本校の教育活動に、変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げ、また、保護者の皆様にはお子様の成長に向けて、学校の教育方針にご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げ、式辞といたします。 平成30年4月5日 長野県木曽青峰高等学校長 横野 秀昭 |