2019年度(令和元年度) 理数科 課題研究

研究生徒 理数科2年38名(男子27名、女子11名)
研究班数 8班

<研究テーマと内容>概要

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生物1班 マイクロプラスチックが生態系に与える影響

 私たちは動物性プランクトンの代表例であるゾウリムシを実験対象として、マイクロプラスチックはゾウリムシの体内に蓄積されるのかどうか、ということについて実験・観察を行いました。結果、ゾウリムシの体内にはマイクロプラスチックが蓄積されている可能性が高いということがわかってきました。今後、これらが魚類の体内にどのような影響を及ぼすのか、また生物濃縮は本当に起こるのか、ということについて実験によって解明されるかもしれません。
生物2班 天竜川水系における魚類の保全についての研究

 現在、生息環境の変化により、河川に生息する魚類の数は変化している。そこで我々はこれらの魚類の保全に活かすため、以下の研究を行った。まず、保護色の幅を増やし、効率的に養殖をするために、エサの違いによる体色と成長の変化について、それぞれアブラハヤを用いて調べた。その結果、どちらも明らかな変化は確認できなかった。次に、河川の塩分濃度の上昇による魚類への影響を調べるため、5種類の魚と、種が不明の魚を用いて耐塩性を調べた。その結果、耐塩性は種・幼魚と成魚で異なっていた。今回の研究から、短期間で種の保全をすることは難しく、更なる研究をすることが保全につながると考えた。
化学1班 チョークの成分と書き味について

 本研究ではよりよい再生チョークを作成するための基礎研究として、成分もしくはメーカーの違うチョーク3種類、試薬の炭酸カルシウム、硫酸カルシウムで作成したチョーク2種類について強度と削れやすさの比較を行った。市販チョークの強度に有意な差は見られなかったが、自作のチョークでは強度にばらつきがあり、その値は極端であった。同一成分のチョークでは、削れた量が多い程摩擦が大きいという実験結果が得られた。一方で硫酸カルシウムと炭酸カルシウムで比較すると、硫酸カルシウムのチョークは炭酸カルシウムと比べて削れる量が少なかったにもかかわらず、感じる摩擦は大きかった。これはチョークの成分が感じる摩擦=書き味に影響していることを意味する。この結果は、チョークの再生時に追加で炭酸カルシウム、硫酸カルシウムを加えることで書き味を変えることができることを示唆している。
化学2班 河川水成分の採水時期による変動

 伊那市高遠町には高遠城址公園があり、そのお堀には湧水が由来とされる池がある。我々はこの水がどこから来ているのか明らかにしたいと思った。我々は採水時期によって河川水成分濃度は変動するのか疑問に思い、8月から12月にかけて高遠方面6か所で採水を行い、キレート滴定を用いて河川水に含まれるMg2+、Ca2+ 濃度を測定した。その結果、採水時期によって成分の絶対量は僅かに変化するが、成分濃度比はほとんど変化しないこと、成分濃度比は上流の地層の成分を反映した特有の値を示すことが分かった。この結果から、成分濃度比を用いることで、どの時期に採水を行っても、上流部の地層を推定でき、水がどこから来たのかが分かる可能性が示唆された。
物理1班 音の吸収と布の特徴

 日々の生活で部屋の状況により音の響きが変わることに気づき、そこから音の響きが何を要因として変化しているのか疑問に思った。そこで音の響きを数値化し、防音効果を得たり、より響かせるといったりすることを可能にするため、音の吸収材として働く布を用意し、その布の吸音率を測定した。測定する空間として段ボールを用い、中に音源を設置し、音の吸収材として布を入れ吸音率を測定した。用意した10種類の布いずれも枚数を増やすごとに音量は小さくなり、布が音の吸収材として働くことが確かめられた。布の厚さ、質量、糸の太さの三つの観点で吸音率を比較したところ、布の吸音率に最も影響するのは糸の太さであることが分かった。日常生活の中で音を響かせたくないシチュエーションではトレーナーやニットなどの糸の太い服を着て、音を響かせたいときはYシャツや化学繊維の服などの糸が細い服を着るとよい。
物理2班 紙飛行機を遠くまで飛ばす条件

 手軽にできる遊びとして親しまれ、知らない人はいないであろう紙飛行機。私たちは、そんな紙飛行機について興味を持ち、どのような紙飛行機が遠くまで飛ぶのかについて、後退角について着目した。まず、後退角の違う五つの機体を用意し、手で投げた時の軌道を調べた。次に、自分たちで制作した風洞に機体を設置し、送風機で風を送り、各機体の揚力・抗力を測定し軌道との関係を調べた。結果、揚力は全ての機体で等しく、抗力は後退角の絶対値の大きい機体は小さくなった。しかし、手で投げた時の軌道との関係は見られなかった。手で投げた時の各機体の軌道の違いは、機体に働く揚力の位置が関係していると考えられる。
数学班 オセロの盤面変化による影響

 ポピュラーなボードゲームのオセロ。その盤面の形をほかの多角形に変えてもゲームが成り立つのか興味を持ち、この研究を始めた。一辺の置く場所が6か所の正三角形のオセロ盤を自作し、手計算、プログラミングを用いて各手順を検証した。これらの検証により先手よりも後手のほうが有利だという結果が出た。後手はこのオセロ盤の条件では角を取りやすいため有利だと考えられる。しかし今回の実験ですべての手順を検証できたわけではないため、これらの結果は変わりうる。
地学班 液状化現象の発生と間隙水の密度

 日本で甚大な被害を及ぼした液状化現象に興味を持ち、液状化現象の起こりやすさと間隙水の密度の関係性を調べることを目的とした。粒径と液状化現象の起こりやすさを調べた【実験1】では、粒径が大きい方が液状化しやすいことが分かった。また、先行研究より液状化現象が起こらないと考えられる礫(粒径2㎜以上)でも液状化現象が発生した。【実験2】よりこれは、実験の規模が小さく、振動機の揺れが伝わりやすくなったためだと考えられる。【実験3】では、間隙水の密度と液状化現象の起こりやすさの関係を調べたが、今回の実験では関係性は見られなかった。