★楝の木(阿智高校のシンボル)
 阿智高校のシンボルである楝(アフチ、オウチ)は、センダンという樹木の古い呼び名で、学名をMelia azedarach L.という。
▲南校舎の前庭で咲く楝の花
 「アフチ」の語源は、フジの花の色に似ているので淡藤(あわフジ)からという説があるが、はっきりしたことはわからない。また「センダン」は、果実の付き方が数珠のよう見えるので千珠(せんだま)からという説や、果実がたくさんついた様子が、大津市にある三井寺の祭礼で供える千団子のようだからという説などがある。
 主に四国や九州以南の暖地に自生する落葉高木で、高さは5〜15mになる。生長が早く、どっしりとした樹形や水平に広く枝を張って大きな緑陰をつくることなどが好まれ、各地の庭や学校、公園などにも植えられている。
 5〜6月に若枝の葉の脇から柄を伸ばし、多数の薄紫色の小さな花が円錐状に咲く。花は5枚の細く白い花弁の中央に、雄しべの花糸が合着した濃い紫色の筒があり、その先に黄色い葯がつく。花からは、ほのかな香りがする。
 花が終わると楕円形の緑色の果実をたくさんつけ、10〜12月になると、落葉した枝一面に黄褐色に熟した果実がぶら下がる。果実はヒヨドリなどが好んで食べるが、人が食べると中毒を起こす。
 乾燥した果実には整腸や腹痛を抑える作用が、生の果肉にはひびやあかぎれの治療に効果があり、樹皮は虫下しの薬として用いられた。近年、葉の抽出成分にインフルエンザウイルスを分解したり、がん細胞を死滅する効果があることもわかった。木材は木目が美しく、建築材や家具材、楽器・下駄・彫刻などの材料に用いられる。
 楝は古くから和歌に詠まれたり、文学に度々登場する。
 『万葉集』に山上憶良が詠んだ、「妹が見し楝の花は散りぬべし わが泣く涙いまだ干なくに」という歌(今は亡き妻が好きだった楝の花は散ってしまおうとしている。私の涙はまだ乾かないのに。という意味)がある。
 また、日本の歌百選に選ばれている『夏は来ぬ』の4番は、「楝散る川辺の宿の 門遠く 水鶏声して 夕月すずしき 夏は来ぬ」という歌詞である。
 日本の古くからの色に、「楝色」がある。淡く、やや青みがかった紫色で、似た色を本校のいくつかの運動クラブがユニフォーム等に用いている。爽やかで、上品な落ち着いた色なので、これから阿智高校のスクールカラーとしてもっと広めていきたい。
 なお、「栴檀(センダン)は双葉より芳し」という諺(大人になって大成する人は、子どもの頃から並外れて優れている。という意味)があるが、この栴檀は香木の白檀(ビャクダン)のことで楝ではない。