信州大学によるSSH連携講座の報告


■ 数学の連携講座「微分積分への招待」 が行われました。詳細は以下のとおりです。

講 師 信州大学 理学部 助教授  高木啓行 先生
テーマ 微分積分への招待
場 所 長野県諏訪清陵高等学校 会議室
期 日 平成17年9月17日(土) 10:00〜12:00
参加者 3年生理系希望者(36名)
概 要

 3年理系生徒が、数学V微分積分を一通り学習したところで、もう一度微分積分のもとになっている考え方は何であるか、深く掘り下げて考え、その考え方を用いて、球の表面積を求めた。
 1時間目、まずクイズが出された。「南に1km行って、東に1km行き、北に1km行くと、もとの位置にもどりました。そんなことってありえる?」「北極から出発する。」という答が生徒から出たが、地球上北極以外にまだそのような地点が(いくつも)あるとのこと。答は今日の最後に教えるので、皆さん考えておいてください、とのこと。
 人間は曲がったものが苦手で、曲がったものをまっすぐにして考える性癖がある。曲がったものを理解する道具が微分積分学。細かく分けると曲がった部分がほぼまっすぐになる。これが微分の考え方である。さらにそれを足し合わせて値を求めることができる。これが積分の考え方である。微分積分学は人間の自然な素朴な考え方にもとづいている。
 円を中心角2π/n個の扇形に分割する。それらを互いに組み合わせて並べる。分割を細かく(n→∞)すると、それは底辺nπ、高さの長方形に近づく。
従って、求める面積はπrとなる。
 S(r)を半径の円の面積、l(r)を半径の円周の長さとし、l(r)h≦S(r+h)−S(r)≦l(r+h)hh>0で割って、h→+0とすると、S'(r)=l(r)が得られる。
 たとえば一辺がの正方形の周の長さl(a)=4a、面積S(a)=aではS'(a)=l(a)とならないのはなぜだ?変数が一方は半径で一方は一辺で異なるのだから、結果がちがうのは当たり前だ。しかし、ここで上と同様のことを行うとl(a)h/2≦S(a+h)−S(a)≦l(a+h)h/2h>0で割って、h→+0とすると、正しい関係2S'(a)=l(a)が得られる。
 半径の球の表面積S=4πr・・・@、
 体積V=4πr/3・・・A
 を導いてみよう。大きく2つの方法がある。解法TでAから@を導くときは、円の場合と同様に
 S(r)h≦V(r+h)−V(r)≦S(r+h)hからV'(r)=S(r)を導く。
 解法Uでは、曲面積を求めるとき、細かく分けたあとどのようにまっすぐにするかに難しい部分がある。球の表面積を工夫して求めてみよう。ということで、生徒は考え始めたが、時間が足りず、先生からひとつの方法について説明があった。(球面の分割の仕方はいろいろある。)
 経線で縦に分割する。次は失敗の例である。失敗すること、なぜ失敗したかを考えることは大切である。
 円の時のように互いに組み合わせて、分割を細かくすると、縦πr/2、横2πrの長方形に近づくからS=πr/2・2πr=πと考えると間違った答となる。円のときとは異なり、互いに組み合わせたとき、重なる部分が出てしまうからだ。
 次のように考える。北極から南に球面上を距離下った地点の中心角θとするとx=rθであり、その地点で水平に地球を切った切り口の円の半径はrsinθである。経線で縦に分割した一片を考える。距離の地点でのその一片の緯度線の長さは2πrsin(x/r)/nであるから、縦分割の一片の面積はπr2πr/n・sin(x/r)・dx=4/n・πr(計算略)となる。それを倍して球面の表面積4πrが得られる。 他の方法も考えてみてください。(自由研究として投げかけられた。)
 クイズの正答(のひとつ)は生徒から出た。先生がそれを補足した

生徒の様子  生徒は数学Vの微分積分を一通り学習しているため、先生の話は概ね理解できたようであった。先生の質問に積極的に答えていた。そして、今まで学習してきた内容をもう一度深く考え直すことができたようであった。最後の球の表面積の計算は難しかったが、生徒達は真剣に取り組んでいた。
 

 

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