長野県上伊那農業高等学校

学校長挨拶

藤江 明雄

2018.04.7

 長野県上伊那農業高等学校ホームページをご覧いただきありがとうございます。
本校は、明治28年(1895年)、上伊那郡立上伊那簡易農学校として開校して以来123年の間、上伊那地区の農業の基幹校として、19000名を越える優秀な人材を社会に送り出してまいりました。
これまで「生命(いのち)に学び 地域に開く」をスローガンに、生命体の育成という体験を通して、21世紀に求められ生命、食料、環境関する専門分野の知識や技術を身に付け、地域の発展に貢献する人材の育成をめざしてまいりました。
今後は、「上農で私たちと伊那谷をデザインする」という新たなスローガンのもと、今まで培ってきた伝統を基礎に、新たな学びを取り入れたさらに進化した上伊那農業高等学校を目指します。

4月7日の入学式で新入生にこんな話をしました。

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厳しかった冬も過ぎ、桜も満開となりました。東にそびえる仙丈ケ岳も凛とした純白の冬山の姿からやわらかで穏やかな青みをおびた姿に変わってきました。皆さんの入学とともに、本校に春がやってきました。
さて、本日ここに平成30年度、長野県上伊那農業高等学校の入学式を挙行いたしましたところ、日頃より本校の教育活動にご尽力をいただいておりますご来賓の皆様のご臨席を賜り、栄えある入学式に花を添えていただきましたことに深く感謝申し上げます。
晴れて入学を許可された144名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。また、今日までお子さまをはぐくまれてこられた保護者の皆様、お子さまのご入学おめでとうございます。

新入生の皆さんは、本校入学を自ら志し、きょうから上伊那農業高校の一員となりました。本日の喜びは、皆さんのこれまでの努力の結果であることは、いうまでもありません。しかし、その陰には、皆さんを慈しみ育ててこられたご家族、小学校や中学校で教えを受けた先生方の心のこもった指導があったことも忘れてはなりません。また、皆さんのまわりで、見守る人たちがいたということにも思いをいたしてください。

私は大町の出身ですが、祖母は、箕輪町三日町の出身です。天竜川のすぐ横にある祖母の家によく遊びに連れて行ってもらいました。祖母は私をとてもかわいがってくれました。祖母は、筋肉の緊張が高まるパーキンソン氏病という病気にかかっており、手は震え、背はがかがんでいました。
仏教への信仰が厚い人で、月一度開かれる、御詠歌の会には不自由な体にもかかわらず、毎回欠かさず参加していました。御詠歌というのは仏教信者が唄う、仏様のお慈悲や教えの和歌に節をつけたものです。
小さいころ、毎月、御詠歌の会に出かける祖母のお供をするのが私の仕事でした。携帯電話も、普通の電話でさえ普及していない時代でしたから、背中がかがんで、足の不自由な祖母に何かあったらすぐに知らせるのが私の役目でした。
祖母は、御詠歌の会に出かける前には、必ず「梅漬け」を食べていました。ある時、そのことを祖母に尋ねると、祖母は、「梅はね。その日の災難を除けてくれるんだよ。」と言いました。
ある日、いつものように祖母は梅を食べてから、私がお供をして、御詠歌の会に向かっていた時のことです。家のちょうど裏で、祖母は、何かにつまずいて転んでしまいました。私はすぐさま、家に駆け戻り、祖母が転んだことを伝えました。それを聞いた母はすぐに、私と祖母のところに駆けつけました。さいわい、祖母は、膝と顔を少しすりむいた程度でした。
その時私は、不思議に思い、祖母に尋ねました。「難除けの梅を食べたのに、転んじゃったじゃないか。」すると祖母は静かに答えました。「そうじゃないよ。難除けの梅を食べたから、この程度のかすり傷ですんだのよ。
食べてなかったら、もっとたいへんなことになっていたかもしれないね。」「なーるほど。」私は祖母の答えに深く納得しました。
「梅を食べても災難に会う。」と考えるのか、「梅を食べたからこの程度のけがで済んだ。」と考えるのか。マイナスの考え方をするのか、プラスの考え方をするのかの違いです。
「これしかできない。」ではなく「ここまでできた。」で考えてほしいのです。
勉強で、クラブ活動で、小さな「ここまでできた」の積み重ねを続けていってください。「ここまでできた」の積み重ねが君たちの成長です。

さて、最後に皆さんにお願いがあります。皆さんは本校で、「農業を学ぶ」ことはもちろんですが、ぜひ、農業で学んでほしいのです。
現代の社会を取り巻く状況は急速に変化しています。そんな中、私たちは数年前から上農での学びの在り方を考えてきました。単に知識を詰め込むだけの授業ではなく、自ら考え、正解のない課題に対応できる生徒を育てようと、本年度から学科を改編し、新しい学科、コースを設置することにしました。
授業で、トマトの作り方は学びます。それが学びのすべてではないのです。トマトを作ることを通して、植物のこと、土のこと、私たちの故郷のこと、自分の将来のこと、ありとあらゆることを学んでほしいのです。そして、自分で作ったトマトを使って、何ができるか、どうやったら人とつながっていけるか。作ったトマトでどうしたら周りを幸せにできるか考えて欲しいのです。仲間で話し合って欲しいのです。
それが、新学科のスローガンである「上農でわたしと伊那谷をデザインする。」ということです。

私達教職員もそんな皆さんをあらゆる面から支援します。3年後、伊那谷から世界を考えられる人になってほしいと願っています。