長野県須坂園芸高等学校
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特集!造園デザインコンクール5年連続文部科学大臣賞受賞 
造園クラブの軌跡

造園デザインコンクール5年連続の軌跡

本校造園クラブは全国造園デザインコンクールにおいて平成18年〜平成22年にかけて5年連続で文部科学大臣賞を受賞するという過去に例を見ない快挙を成し遂げた。

その軌跡を特集する。


平成22年

 文部科学大臣賞5年連続受賞 文部科学大臣賞とは、入賞者の数と内容により、全国で一番優れている学校に与えられる賞である。スポーツに例えるならば団体戦優勝である。

区分と入賞者は次の通り


【街区公園】

国土交通大臣賞 (全作品の中で、総合的に最も優れた作品)

造園科3年 森山 大輝  テーマ:幅広い世代の人が楽しめる公園

入選

造園科3年 小林 彩実  テーマ:住人と共に育つ町の庭〜水と緑のヒーリング空間

【住宅庭園】

入選

造園科2年 野口 惠理  テーマ:自然に優しい快適空間

造園科2年 樋口 翔子  テーマ:家族で過ごす広々とした空間

造園科2年 鈴木  幸  テーマ:豊かな自然の中で

造園科2年 木藤美知香  テーマ:安らぎの夢空間

佳作

造園科2年 小林 優美  テーマ:『ベジタブル&フルーツガーデン』を暮らしの中に

【公共的空間】

入選

造園科3年 宮林那未子  テーマ:『自然の癒し』と『感動』の庭

【実習作品】

入選   

造園科3年 小林 あて  テーマ:和と洋の雰囲気をいかした空間


今回で5度目、しかも5年連続の文部科学大臣賞受賞という栄誉に輝いた。

2年次に全国高等学校造園教育研究協議会長賞を受賞した小林さんは感想をこう記している。


造園科 小林 彩実(2年次の感想文)

私は、小さい頃から絵を描くことが好きで、中学生の時に、庭や公園など空間をデザインすることを学びたいと思い、造園科のある長野県須坂園芸高等学校に入学しました。 入学して1年目は、2年次よりコースを選択するために、授業では造園以外にも多くの分野を学び、デザインの機会がありませんでした。 しかし、1年生の12月に、造園科緑地計画コース担当の西澤先生に「全国造園デザインコンクールに図面を描いて応募してみないか。」と勧められ、初めて庭園デザインに挑戦しました。 毎日放課後、先生に解説していただき、校内庭園を歩いて様々な植物を実際に見たり、触れたりすることにより、植栽や石組みを確認し、毎日夜遅くまで残ってデザインを考えました。 「日向や日陰にはどんな木を植栽すれば良いのか。」「生活の場である住宅庭園を機能的にするにはどうすれば良いのか。」など、体感しなければ図面に描けない要素がたくさんありました。 苦労しましたが、描き上げる事が出来て自信となりました。

2年生で私は上記のコースを選択し、造園デザインの手法を学んできました。さらに課外活動では、造園クラブの一員として、地域の里山である須坂市臥竜公園管理の様々な活動を行ってきました。 今年度は、これまで佳作以上の成果を出した仲間と共に行ってきたマツ枯れ被害対策と、公園内に自生しているヤマザクラ、リョウブ、ウリカエデなどの美しい景観を未来に残すために、自然の生態系に配慮した設計案を考えて、ランドスケープ模型を製作しました。この6年間にわたるクラブ研究の成果は、平成20年度信州フィールド科学奨励賞T種受賞(信州大学山岳科学総合研究所主催)となり、大きな成果が得られました。

2回目の挑戦である第35回全国デザインコンクールでは、造園クラブ活動を通して学んだ事を活かして挑みました。『Familiar Garden 〜親しみの庭〜』をテーマに、家庭菜園やハーブを育てるスペースや、実生で増える植物の花壇を設置し、緑と共に過ごし、生活を豊かに出来る住宅庭園を計画しました。今までの活動から学んだ事を通して、周囲の景観に配慮した外観構成を考える事ができ、満足できる計画図を描くことができました。  締切日前の1ヶ月間、約10数名の仲間と共に同じ目標に向かって、休日も1日中描き続けました。今回初入選でき、さらに全国高等学校造園教育研究協議会長賞を頂くことができました。 この経験を今後の生活に生かして、私の夢である大学環境デザイン系学部への進学に向けて頑張っていきたいと思います。(3年次も連続入選し、千葉大学への進学を果たした。)

平成18年

この”奇跡”ともいえる連続文部科学大臣賞受賞の物語は始まりを告げる。優秀賞を受賞した当時のクラブ員の姿は顧問の記述より垣間見ることができる。


住宅庭園計画図 入選 造園科 緑地計画コース 2年 福澤 篤史(日本造園建設業協会長賞)

家業は造園業で、造園クラブに所属し、熱心に活動している。来年度クラブ長の予定である。竹林を整備し、竹の品質を高めるため行ってきた晒し竹作りの研究(3年目)に取り組み、今年度は、竹の晒しに重曹と廃油を用いて実験を行い、有効なデータが得られた。さらに晒し竹を用いて、すべて竹だけで作る縁台の製作にも試行錯誤の末、成功した。 この取り組みは、農業クラブプロジェクト発表環境の部で北信越代表となり、全国大会で発表した。また、今年度開催された長野県高校生プレゼンテーション大会で、県知事賞を受賞している。いずれの発表でも、原稿読みの中心となり、すべて暗記し、堂々たる発表態度であった。来年度の2級造園技能試験合格に向けて、2年生では1人だけ今年度3級技能検定に合格している。夏季休業中には、依頼された、須坂市立高甫小学校の体育館南側の庭園の設計を行った。調査のための、下草刈りを1年生部員5名が担当し、植生、石組み設計を2年生部員7名で、地積測量図を3年生部員2名で担当した。石組み設計図面を中心となり仕上げている。現在、春から継続している松枯れ調査(マツノザイセンチュウの同定)、サクラ植生調査(ガイドブック作成中)を中心にして意欲的に活動している。 本コンクールへは2回目の挑戦である。(1年次に住宅庭園計画図に応募している。)今回初めての入選である。


公共的空間部門 入選 造園科 緑地計画コース 3年 宮崎 政幸  

本コンクールへは2回目の挑戦である。(2年次に住宅庭園計画図に応募している。)今回初めての入選である。 3年間造園クラブで熱心に活動してきた。 3年次には部長としてクラブ内を良くまとめている。竹林を整備し、竹の品質を高めるため行ってきた晒し竹作りの研究に3年間取り組み、今年度は、竹の晒しに重曹と廃油を用いて実験を行い、有効なデータが得られた。 さらに晒し竹を用いて、すべて竹だけで作る縁台の製作にも試行錯誤の末、成功した。 この取り組みは、農業クラブプロジェクト発表環境の部で北信越代表となり、全国大会で発表した。 また、今年度開催された長野県高校生プレゼンテーション大会で、県知事賞を受賞している。いずれの発表でも、発表者のまとめ役として中心となり、堂々たる発表に成功した。 夏季休業中には、依頼された、須坂市立高甫小学校の体育館南側の庭園の設計を行った。 調査のための、下草刈りを1年生部員5名が担当し、植生、石組み設計を2年生部員7名で、地積測量図を3年生部員2名で担当した。 地積測量図を中心となり仕上げている。現在、春から継続している松枯れ調査(マツノザイセンチュウの同定)、を中心となり意欲的に活動してきた。 5月に開催されたた「第7回国際バラとガーデニングショウ」インボイス西武ドーム、埼玉県所沢市)に出品し、4m×3mの空間に創作庭園を作った。 この生徒は2年次には「第6回国際バラとガーデニングショウ」の作庭、小布施町にある岩松院庭園の設計、臥竜山ハンドブック「臥竜山の樹木」の調査にも参加している。

右の写真は須坂市長表敬訪問時のものだ。

長野県須坂園芸高等学校 文部科学大臣奨励賞

@住宅庭園部門 入選2枚、佳作1枚 

入選 造園科2年 福澤 篤史 社団法人 日本造園建設業協会長賞(全作品の中で、計画・施工・利用について最も優れた作品) 

入選 造園科3年 池田 典史  

佳作 造園科3年 前川 今日子 

A公共的空間部門 入選1枚 

入選 造園科3年 宮崎 政幸


 
平成19年

昨年の実績がプレッシャーとなる年だ。 そんな重圧ももろともせずクラブ員は同賞賞受賞をやってみせた。

右の写真は高校生で初受賞した前川今日子さんである。

長野県須坂園芸高等学校 文部科学大臣奨励賞 

@公共的空間部門 入選1枚

入選 造園科3年 前川今日子 国土交通大臣賞

A住宅庭園部門 入選3枚

入選 造園科2年 丸山 美穂    社団法人 日本造園建設業協会長賞

入選 造園科2年 秋山英里子

入選 造園科2年 小林  司

 B実習作品部門 入選1枚

入選 造園科3年 營田 浩一 


 
平成20年

おごりや慣れはたいていの場合物事を悪いほうへ導く。

しかしそんなことは彼らには無縁だった。3年連続受賞である。

下の写真は教育委員会表敬訪問時のもの。










児童・生徒教育委員会表彰者代表挨拶 小林司

長野県須坂園芸高等学校 文部科学大臣賞 

@住宅庭園部門 入選4枚

入選 造園科3年 小林 司  社団法人 日本造園学会長賞

入選 造園科2年 町田 桜子

入選 造園科2年 佐藤 博子

入選 造園科2年 小松みずき

@街区公園部門 入選1枚

入選 造園科3年 小松 広樹  社団法人 日本造園建設業協会長賞  

B公共的空間部門 佳作1枚

佳作 造園科3年 秋山英里子

日本造園学会長賞を受賞した小林司君は次のように感想を語っている。

造園デザインコンクール・日本造園学会長賞を受賞して

小林 司(長野県立須坂園芸高等学校造園科)

この度、平成19年度、第34回全国造園デザインコンクールにおきまして、「日本造園学会長賞」を受賞することができ、大変感謝しています。主催者である(社)日本造園建設業協会をはじめとする関係者の皆様に厚く御礼を申し上げます。

私が須坂園芸高等学校に進学した理由は、中学校の時に、造園業を営んでいる父の手伝いをしている中で、造園に興味を持ったからです。1年生の時から、このデザインコンクールに住宅庭園計画図を提出してきました。2年生の時に提出した図面で、初めて入選することができました。今回は、2年生の時より良い図面を描く決意で、「住宅庭園部門」に応募させていただきました。 「日本造園学会長賞受賞「自然の力を生かした庭」の概要」  「自然の力を生かした庭」というテーマを考えた理由は、平成19年12月9日に長野県総合教育センターで行われた「長野県高校生研究発表会」で、工業高校で製作した、風力発電装置の影響です。この自然エネルギーの利用を思い出し、「滝を使えば、庭で水力発電ができるのではないか。」と考えたのです。さらにこの庭には、「雨水を利用した水力自家発電システム」を考え、取り入れました。仕組みは、まず庭に降った雨水を一時的に駐車場地下の貯水タンクに溜めます。その水を、カーポート上のソーラーパネルで発電された電気で、塀の上へと汲み上げます。そこから庭の各所へと水を供給しつつ、少量の水でも発電できる「家庭用リッター水力発電装置」に流します。そこで得られた電力で、庭園内の水を循環させ、駐車場地下の貯水タンクに貯留し、再び利用します。水の循環に、太陽光発電と水力発電を組み合わせることにより、無駄を少なくし、さらに、環境への負荷を少なくするように考えました。自然エネルギーの活用と共に、人間の五感に気付き、その大切さが実感できる庭を目指しました。 最後になりましたが、この作品の制作過程で、須坂園芸高等学校造園科緑地計画コースの仲間達と、図面準備を同じ歩調で進めた事が、良い刺激になりました。 同コース担当教諭西澤国之先生には、多くのアドバイスを頂き、この作品を完成することができました。重ねて感謝申し上げます。 今回の経験を糧に、父を超える職人を目指し、努力していきたいと思います。

平成21年

4年連続同賞受賞。奇跡とは理由があっておこる。彼らの取り組みをみているとそう思わざるを得ない。
受賞の陰には、日々の学習に加え、昼夜を問わない時間外の活動等の並みならぬ努力があった。賞の名前だけが前面に出てそれに隠されてしまいそうだが・・・。

長野県須坂園芸高等学校 文部科学大臣賞 

@住宅庭園部門 入選3枚、佳作1枚

入選 造園科2年小林 彩実   全国高等学校造園教育研究協議会長賞

入選 造園科3年 小松みずき

入選 造園科2年 宮林那未子

佳作 造園科2年 森山 大輝

A公共的空間部門 入選1枚

入選  造園科3年 町田 桜子

B実習作品部門 入選1枚

入選  造園科3年 坂田 小春

C街区公園部門 佳作1枚

佳作造園科3年 佐藤 博子


そして平成22年

この記事の冒頭に書いた5年連続同賞受賞の快挙が成し遂げられた。

生徒たちが見事な活躍を見せてくれた。生徒の努力が成果となって現れたわけだが、指導支援をした教師の存在を忘れてはならない。指導教諭は社団法人日本造園建設業協会に次のように寄稿をし思いを寄せている。


水を得た魚 〜「全国造園デザインコンクール」生徒の活躍に寄せて〜

長野県須坂園芸高等学校 教諭 西澤 国之


本校の生徒の印象は純朴そのものである。1年次に一括募集し、4学科の中から2年次に自ら造園科を希望してくる。生徒の顔は一様に生き生きと輝いている。 「よし、ついてこい。」「この目の輝きを失うな。」と教員の側も決意を新たにする1年のスタートが毎年春に繰り返されている。そして多くの生徒は1年の終わりにその輝きを失うことがなかった。 現在、生徒の進路は毎年のように国立大学の進学から地元造園会社への就職まで幅広く、その希望が実現できるようになってきている。 この結果には、「全国造園デザインコンクール」という学習の機会が果たしてきた役割はとても大きいと感じている。

全国造園デザインコンクール作品製作は、毎年12月初めから開始し、生徒は土日、冬休みも学校へ出てきて朝から晩まで集中的に取り組んできた。 この時期は、2年生でも春からの実習が一段落し、造園材料も少し知り、自信を持って図面が描ける時である。 約60種類ほどの樹木の特性、うろ(空洞部)の原因、剪定後の新芽の状態などの観察、年間のライフサイクルに合わせたマツやシバの手入れ、除草作業などを行っている。 製図については、1・2消点透視図、アイソメなどの無消点透視図の描き練習を済ませて、各自で透視図法の選択が出来るようにしてきた。 3年生は造園会社へ1週間のインターンシップ、社会人講師授業、国営公園等の見学を実施し、視野を広げる機会を設けてきた。 同コンクールには、毎年専門コースの授業を受けていない1年生も数名志願してくる。 そのため、校内に作られた見本庭園である築山枯山水庭園、築山山水庭園、沈床庭園、雑木の庭、茶庭、平庭、ガーデンテラス、壁泉などの学校庭園を一緒に歩いて解説し、生徒の好みをつかむようにしている。

現任校へ着任した7年前、担当する造園科緑地計画コースの生徒を中心にして造園クラブを結成し、休日・放課後、長期休業を利用して活動してきた。 季節ごとに学校から約1kmの位置にある須坂市臥竜公園へ出かけて、全国的にも有名な根上がり松を守るため、松枯れ被害木のマツノザイセンチュウ同定作業、同公園竜ヶ池周辺の260本を超えるソメイヨシノの樹勢回復作業に取り組んできた。 同公園の植生調査を行い、大正15年に本多静六博士が設計した臥竜公園設計図を参考にして、キツツキ類の巣箱設置、市民との協働作業による下草植栽などを行い、環境に配慮したランドスケープの提案を行ってきた。 他にも造園材料である「竹の構造材としての研究」を行い、研究成果を日本学校農業クラブ連盟北信越大会、全国大会プロジェクト発表会で発表し、生徒の活躍の場が広がってきている。 クラブ活動の中心となり活躍した生徒たちは全員、自然からの学びを生かして全国造園デザインコンクールに入選し、多くの生徒が特別賞をいただいている。

私は、現任校に勤務して7年になる。それ以前は、長野県内の農業高校で林業、農業を中心に教壇に立ちながら、造園教科に興味を持ち、様々な造園研修を行ってきた。 それは、造園史を学ぶため千葉大学園芸学部への内地留学、長期休業などを利用した京都、大阪の造園会社、県内竹材店などの研修である。 教員となり18年目に長野県で唯一の造園科を有する現任校へ着任し初めて、それまでの体験を生徒へ語ることができる機会に恵まれた。 樹木医資格も同資格を持ち造園業をしている須坂園芸高校卒業生や生徒の姿に触発されてチャレンジし、着任3年目に取得した。

3年ほど前から学校庭園の築山山水庭園の池に浮草が繁茂し、年に何度もその除去作業に追われている。 取り去った後の透明な水からは、新鮮な空気とエサを求めて池の主となっている鯉が口をパクつかせて出てくる。 毎年、大勢の生徒が全国造園デザインコンクールの出品を希望し、1年生から3年生まで同じ部屋に集まり、膨大な資料に囲まれながら、自分の机が与えられ、各自の夢の公園、理想的な庭園に向けて一歩ずつ描きを進めている。 その姿は高校へ入り、自分が求めていた環境をつかんだ「水を得た魚」のようでもある。そして、逆流にものみ込まれない強さを獲得してきた。 最近、好きな造園を生徒と共に、とことん追求できる場を得た私自身の姿と重なっていることを実感している。


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